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ただ今、人生の仕切り直し中のケアマネ
プロフィール
HN:
かたつむり
性別:
女性
自己紹介:
心と身体を壊し、まだ人生の仕切り直し中のケアマネ。

保有資格:社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員。ついでに日商簿記2級・全商簿記1級
(Twitter@renrinoeda2)
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父の前に現れた『天使』

父は今月に入り急激に悪化した。

 

父におかしな言動が目立ち始めた。何かが聞こえるのだ、父だけに。つまり幻聴である。
そして、父だけにみえるのだ。そう、幻覚や幻視も出始めたのだ。

また、話すことが現実と過去が一緒になったり、突然話が違う内容になり、話がおかしくなったりすることもでてきた。

そして、手を伸ばして、何かを取ろうとしていた。

今まで、出来ていた薬の管理を始め多くの事が、出来なくなってきた。

ベッド上で過ごすことが多くなり、一日の半分は寝ていることが多くなった。

 

先週の日曜日に実家へ行くと、父の様子が明らかにおかしかった。

常にイライラしつつ、でも強い不安感にも襲われ、一人でいることが出来なくなり常に誰かがそばにいないといけない状態だった。

一度も『弱さ』を家族に見せたことのなかった父の、この不安定な精神状態の理由はすぐにわかった。

 

命の期限を切られた人が必ず苦しむ、『死が迫っている恐怖』であり、それを受け入れられない『葛藤』。

 

何かの本で読んだことがある。

『死期が近づいている現実を受け入れる』前に、みんな必ず苦しむ葛藤。

 

まさに、それに父が苦しんでいるのだと、思った。

 

そのような状況でも、父は私達に、その苦しみをぶつけない。

八つ当たりをしたり、物を投げつけるようなことは、一切しなかった。

また、父の『強さ』を思い知らされた。

 

父が苦しんでいる理由がわかっても、どうすれば良いのか私には解らなかった。

どうにかして父の苦しみを少しでも取り除きたかった。

心は無理でも、せめて身体の苦痛だけでも。

 

息が苦しそうな父に、私は提案した。

『お父さん、辛そうだから、(訪問)看護師さんに来てもらおうよ』と。

父は『俺には解らない』と言った。

当然だ、今の父に判断が出来るわけがない。

でも、父の意思確認はどうしても必要だった。

父自身の事だけでなく、我が家の大事な事は全て父が決めて来た。

その父が、最期まで『父らしく』いるために、私は、最期まで父の意志を尊重すると決めていた。

常に『今まで通りに父に接する』と決めていた。

いずれ来るであろう、父が意識がなくなるその瞬間まで。

だから、父の支援のサービスに関しても、私は父に必ず事前確認や事前の了解を取ってから依頼をしていた、判断力が鈍くなっていても。

病状の進行で理解力も落ちてきている父に解る言葉で、何度も言葉を換えて、繰り返し父に説明を続けた、『苦しいのなら、看護師さんに来てもらおう』と。

『解らない』と、繰り返していた父が、私に訊いてきた。

 

『俺にとっての医療とは何だ?』と。

 

命の期限を切られている父にとって、自分が医療を受ける意味を見いだせないでいることは、すぐに解った。

だから、私は、父にこう答えた。

 

『お父さんにとっての医療は、(身体の)苦しさや痛みを取り除くためのものだよ』と。

 

父は、もう一度私に訊いてきた。

 

『お前から見て、俺はどう見えるんだ?』と。

 

私は即答した。

 

『はっきり言う。お父さんはとても苦しそうだ。身体の痛みもあるんでしょう?お父さんは私にはそういうことは言わないから、具体的には解らないけど、痛いのだろうとおもう。私は、せめて、お父さんの、この息の苦しさだけでも取り除きたいんだ。』

 

何も言わない父に、私は、訴え続けた。

 

『苦しいとか、痛いとか、辛いとか、どんな理由でもいいんだ、我慢しないで看護師さんに来てらっていいんだよ。そのために(訪問)看護師に来てもらえるようにお願いしたんだから。』と。

 

父は、苦しそうに言った。

『苦しいこと、痛いこと、辛いことが沢山ある。』と。
やっと、みせてくれた、父の本音のかけら。

 

『そんなに沢山あるのなら、なおさら来てもらおう。』

そういった私に、父は、怒るように言った。

 

『じゃあ、呼んでくれっ!!』

 

『それじゃあ、来てもらうよ!』

私は、父のその言葉を受けて、あえて父の目の前で、携帯電話で訪問看護師さんへ緊急の訪問を依頼した。

 

30分ほどで看護師さんは来て下さった。

母と私が立ち会った。

姉には報告したが、姉は『私が立ち会うと大ごとになるから、親父にとってよくない。だから私は、あえて行かずに部屋にいるよ』と、言った。
賢明な判断だと思った。

 

父は、看護師さんに苦しさや痛みを訴え続けた。

初めは、身体的な苦しみや痛みを訴えていたが、途中から話の内容が変っていった。

父の訴えが『心の苦しみや辛さ』にかわっていたのだ。

 

死期が迫っている父にとって、苦しいのは身体よりも、『こころ』だった。

 

父の言葉のひとつひとつを、しっかりと受け止めながら、父の言葉にうなずき、最低限の相づちと声掛けを続ける看護師さん。

父は1時間以上、自分の『苦しい想い』を看護師さんに、話し続けた。

やがて、父に変化が見られた。

父の表情が穏やかになり、笑顔も見られるようなった。

 

1時間以上にわたる父の話を聴く看護師さんの姿に、これが『傾聴』なのだと、私は、強い衝撃を受けた。

 

みな、『クライアント(=ご利用者様とご家族)の苦しい思いに耳を傾けて聴き、その思いを理解して、クライアントの気持ちに寄り添う』と、『傾聴』が大切だと簡単にいう。

しかし、私は、人間は相手の気持ちを全て理解することは不可能だと思っている。

その不可能である事を踏まえた上で、ご利用者様とご家族の気持ちを少しでも理解をする努力をすることが、福祉専門職として大切だと思っている。

だから、私は、ご利用者様とご家族の苦しい想いを理解しようと努力することを、『傾聴』という、漢字二文字で片付けられることが、とても嫌いだった。

 

長い時間、父の言葉をしっかり聴き、父の苦しい想いをしっかり受けとめようと、全身全霊で父と向き合う看護師さんの姿は、まさに必死に患者の想いを『傾聴』し、その苦しみに寄り添おうとしている姿だった。

その光景を、私はひたすら見つめていた。

 

表情が明るくなった父は、『写真を撮りたい』と、言い出した。

「看護師さんとお母さんと一緒に写真を撮りたい」といって、私に自分の携帯電話を渡そうとした。

私は、手ブレが酷いので、「お姉ちゃんに頼むから呼んでくる」といって、姉をよびにいった。

 

姉に『お父ちゃんが携帯で写真を撮って欲しんだって、私は手ブレが酷いから、姉ちゃん撮ってよ』と、いったら、当然姉は驚いた。

『なんだよ、突然、何が起きたんだよ』と。

私が姉に『看護師さんに話を色々と聴いてもらったら、気持ちが楽になったらしい』と、報告すると、『なるほど』と、姉も理解した。

 

姉と二人で父の部屋へ行くと、父は母に支えられて、トイレへ行くところだった。

ここ数日は、ベッドのそばのポータブルトイレに行くのがやっとだったのに、母に支えられながらもしっかりと歩いていた。

トイレから戻ってきても、『息が苦しい』と言わなかった。

看護師さんと話をしている途中から、『息が苦しい』とは言わなくなっていた。

 

看護師さんと母と一緒に写真を撮った父は、『今度は(家族)4人で(写真)を撮りたい』と言い出した。

看護師さんがiPadで家族の4人での写真を撮ってくれた。

それは、私達家族にとって初めての、家族4人で撮った写真でもあった。

 

父は、『もう一つしたいことがある』と、言い出した。

母に対してである。

父はいままで、母のことを、母の名前か、『お母さん』と呼んできた。

でも、一度でいいから呼んでみたかったそうだ、昔、近隣の人達が呼んでいた母の呼び名で。

その呼び名で母に向かって数回言った父。その表情はとても嬉しそうだった。

 

 

 

数日後、往診の時に立ち会ったケアマネさんが父に訊いたそうだ。

『これからどのように過ごしたいですか?』と。

父は、

『これからも家族が明るく笑顔で仲良く過ごして欲しい』

『女ばかりだったけど、楽しかったよ』

仕事中に、ケアマネさんから電話での報告の中で、父のこの言葉を教えてもらった。

父の希望は、すでに自身の事ではなく、自分がいなくなった後の私達家族の事だったのだ。

「父は、もう、自分がいなくなった後の私達家族の事を想っているのですね」

私は、泣きそうになるのを堪えながら、ケアマネさんに訊いた。

職場で受けた電話でなかったら、泣いていたかもしれない。

「そうだと思います」とケアマネさん。

 

父は、自分の死に対する恐怖を乗り越えたのだ・・・そう思った。

 

それが出来たのは、家族の力ではなく、訪問看護師さんが、まさに、苦しんでいる父の想いに必死に寄り添ってくれたからだと思った。

 

父は、訪問看護師さんが来るときに、『○○さん(父の話を聴いてくれた看護師さん)、くるかな?』と、何度も言う。

私は、『訪問看護師さんは指名制は出来ないんだからね。他の看護師さんの前で、○○看護師さんのことばかり言ったら、他の看護師さんに失礼だからね!』と、釘を刺してます。

 

父を苦しみのどん底から救ってくれた、○○看護師さん。

 

きっと、父には『天使』にみえたのかもしれない。




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(本当に、本当に、ずっと書けずにごめんなさいっ)


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